タイマーの話

ご存知の通り、PEP英語学校の教材・レッスンでは、特製タイマーを使います。

レッスン時に、傍らに大きなタイマーを置いて、受講者の方にこれを意識するよう求める、というやり方は、英語業界ではあまり一般的ではないようにも思います。

しかし、特に全国通訳案内士試験二次口述の課題では、時間の縛りがあり、これを守ることが重要です。よって、この試験の対策をするには、タイマーを使うことが合理的です。

実は、このタイマーを使うという発想は、私の2つの趣味から得たものです。

1つはクラシックギターです。今はやめてしまいましたが、かつてはハマっていて、個人レッスンも受けていました。

音楽のレッスンでは、必ず傍らにメトロノームがありますね。あれです。

私のギターの先生は、メトロノームにつき、次のように言っていました。

「芸術家の演奏は、速度が自在に変化し、決してメトロノームのようなイーブンペースではない。しかし、それは、やろうと思えばメトロノームのペースにきちんと合わせられる基礎的技術の上にあるものだ」

なるほどですね。

この「メトロノームに合わせる基礎力」と「自在に速度が変化する芸術的演奏」との関係は、書道でいうと、「きちんとした楷書を書く技術」と「芸術的な草書体で書く技術」との関係に対応するものかと思います。

基礎力のない最初のうちからプロの真似をして「草書体」で書いても、それは「崩し字」ではなく、「崩れた字」に過ぎないわけです。

 

さて、もう1つの趣味は、将棋です。

(プロの三面指し指導対局。左は豊川七段、右は杉森)

 

将棋では各対局者に「持ち時間」が設定されており、消費時間を記録係が管理します。傍らにはチェスクロックが置いてあります。あれですね。

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将棋の対局では、記録係は単に消費時間を管理するだけではなく、口頭で対局者に「~先生、残り時間~分です」のように伝え、持ち時間が無くなった後、「1分将棋」になると、「秒読み」を行います。

つまり、これは対局者がいちいち時計版を見ることによって、本来、対局に向けるべき集中力を削がれることを防ぐ目的ですね。

私は、将棋の対局時に必要とされる集中力は、通訳の時の集中力と似ていると思い、「秒読みタイマー」を動画で作り、これを組み込んだ通訳自習用動画教材を作りました。これが、「番勝負!」シリーズです(このネーミングも将棋由来です。「将棋名人戦七番勝負」のように言いますね)。

今の全国通訳案内士試験二次口述が現在の形になった2013年に、私がSkype個人レッスンを企画した際、最初に求めたのが、タイマーです。

最初は、家電量販店へ行って、適切なタイマーを探しました。

私が求めていたタイマーは、表示板が大きくて見やすいものです。スカイプの画面越しに受講者の方が見やすい大きさのもので、少なくとも幅20センチ程度以上のものが欲しいと思っていました。しかし、そのようなものは市販されていません。

そこで、やむなく自作することにしたのですが、機械仕掛けのものを作るような専門的技術は私にはありません。それで、フリー素材の動画を加工して作ったのが、「プレゼン演習2分タイマー」と「通訳1分タイマー」です。

最初はやむを得ずに自作したのですが、作ってみると、これが非常に具合がいい。画面が大きくて見やすいだけではなく、動画にしたことで「秒読み」を入れることができ、また動画教材に組み入れることが容易になりました。