我々は、子供のころから親に「ちゃんと『ありがとう』を言いなさい!」と躾けられますね。
これは英語でも同じです。
ただ、「サンキュー」も、場面と使い方によっては、命令的に聞こえることがあります。
たとえば、
“Would you please not smoke in here? Thank you very much!”
と言う場合、一人が煙草に火を付けようとしたので、もう一人が第一文 “Would you please not smoke in here?” を言い、それを受けてもう一人が煙草に火を付けることを止めてくれたのを見て、最初の一人が第二文 “Thank you very much!” と言うのであれば、この “Thank you very much!” は、文字通り「ご協力ありがとうございます」という「お礼」の意味になります。
しかし、第一文と第二文の間に「間」が全くなく、相手が火を付ける行為をやめる前に強い口調で “Thank you very much!” まで一気に言ってしまうと、これは「以上!いいね、逆らうんじゃないよ」という「命令」の意味になってしまいます。
公衆トイレの張り紙に「綺麗に使っていただいてありがとうございます」というのがありますが、これが「お礼」を述べた文章ではないことは明らかです。
なぜならこの張り紙は、使用者が「使う前」に読むものだからです。その意味するところは「いいね。汚すんじゃないよ」という命令文を polite にしたものですね(ちなみに、この polite にも単に「礼儀にかなった」というだけでなく、「表面的で心にもないこと」というネガティブな意味があります)。
サンキューの濫用は危険、ということですね。
さて、下の動画は、通訳のお作法についての講義です。
この中で、私は「通訳する際に、笑顔、アイコンタクト、結辞(最後の Thank you)は、不要である」ということを説明しています。
笑顔、アイコンタクト、結辞(最後の Thank you)を通訳の際に行ったからといって、減点になるわけではありません。
しかし、上述のように “Thank you” は場合により「これ以上文句言うな」という意味になることもあります。
通訳の作法、及び通訳の原理から、通訳の際の結辞 Thank you は不要なので、通訳の際、私は結辞(Thank you)を言わない方をお勧めしています。