何を答えれば合格できるか①

既報のように、先日、2023年度の全国通訳案内士試験の施行要領がJNTOのHPで公開されました。いよいよ今年の戦いが始まります。

さて、受験をされる方は、皆、合格したいわけですが、受験者は試験会場に行って、そこで何を答えてくれば合格点がもらえるのでしょうか?

一次筆記試験では、もちろん「正解」を答えてくれば、合格点がもらえます。

しかし、二次口述試験は事情が違います。二次口述には、絶対解がありません。これは特に、プレゼンの後の質疑や、通訳の後の実務質疑などの「質疑」において妥当します。

これはきわめて当たり前のことですが、意外にこの認識が受験者の皆様の間に浸透していません。試験委員から質問をされたら、「正解」を答えよう、として固まってしまわれる受験者は多いようです。

この「固まる」というのは、具体的に言うと、受験者が脳内で「正解」を検索している間、じっと黙り込んでしまい、面接室内に気まずい沈黙が流れる、という場面を作ってしまうことです。

気まずい沈黙を作る、というのは、試験のガイドラインに記された二次口述の評価項目の第2「コミュニケーション(臨機応変な対応力、会話継続への意欲等)」に明らかに反してしまいます。

ガイドラインで謳っているように、二次口述では「会話」をすることが大切なのですね。ちなみに、「知識の内容が正しいか」については、何と、評価項目に含まれていません!(無論「でたらめで構わない」という趣旨ではありませんが、「会話」「対応」「文法・発音」等々が明文なのに対し、「知識の正確性」は明文では謳っていません)

評価項目(ガイドラインより抜粋)

・プレゼンテーション
・コミュニケーション(臨機応変な対応力、会話継続への意欲等)
・文法及び語彙
・発音及び発声
・ホスピタリティ(全国通訳案内士としての適切な受け答え等)

では、質問をされて、答えがとっさに浮かばないときは、どうすればいいのでしょうか?

これも実は簡単なことです。日本語の会話と同じことを英語ですればいいのです。

質問の内容や趣旨がよくわからない場合は、「すみません。ご質問が理解できませんでした。もう一度おっしゃっていただけますでしょうか」「ご質問は~か、という意味でしょうか」等々、まず答えるべきです。

質問の意味は分かったが、答えがとっさに浮かんでこない場合は、「なるほど、~かということですね。なかなか難しいですが…」等々を言えば、考える時間も稼げるし、何よりも「自分は質問の趣旨は了解したが、答えを今、考えているところである」ということを相手に伝えること(コミュニケーション)ができます。

何も言わずに黙ってしまうと、受験者側としては、いい答えをしよう、と一生懸命誠実に頑張っていても、それが相手(試験委員)に伝わりません(「コミュニケーション」がない)。試験委員の方も、助け舟を出そうとしても出しようがない、という状態に置かれ、それが気まずさにつながってしまいます(「臨機応変な対応力、会話継続への意欲等」がない、という評価につながる)。

上記のフレーズを言う上で気を付けるべきは、これらを、①タイミングよく(会話継続)、②正しく(文法、語彙、発音、発声)、③丁寧に(ホスピタリティ)、言うことです。

もちろん、この試験を受ける方は、皆、良識のある大人ですから、日本語なら、問題なくこれらができるはずです。これを英語で行えるようにする、というのが「勉強」のターゲットです。

「もう一度おっしゃっていただけますでしょうか」等々は、決まった汎用性のあるフレーズであり、まさに事前にきちんとした英語表現を準備しておくことが可能です。簡単にできることは、きちんと事前にやっておく。こうすることによって、誠実さが試験委員に伝わることと思います。

具体的な英語表現については、ググるだけで簡単にいろいろ出てきます。

私がお勧めしているのは、たとえば「もう一度質問をお願いします」であれば、 “I’m sorry.  I didn’t understand the question.  Would you mind repeating it, please?” 、また「ご質問は、~かどうか、という意味でしょうか」であれば、 “Do you mean whether A or not?” などですね。

これらを言うときは、発音や文法を正しく、かつ、声の調子、速度や表情も内容に沿ったもの(大変申し訳ないが、という気持ちが表現されることが必要)にすることが求められます。

表情等まで正しいことが要求されるのは、レベルが高いとも思われますが、先に述べたように、事前に準備できるわけですから、特に酷ではないといえます。

全ての知識を頭に入れて試験に臨むことは無理です。しかし、頻繁に出てくる会話継続のためのセットフレーズをきちんとあらかじめ学習しておくことは、容易にできます。

結局、愚直に事前にやるべきことをきちんとやる、という誠実さが口述試験では必要、というところに落ち着くわけですね。