合格後を考える(8)

前回までで、自営業として通訳案内士をやるなら情報発信をすべき、というお話をしました。しかし「自分には発信することがない」と思われる方もあるかと思います。それは違うと私は考えます。世の中にはいろいろな人がいますから、どんなことでも、人に役立つコンテンツになりえます。

通訳ガイド試験に合格されるような方なら、旅行が好き、語学が好き、日本文化が好き、かつ得意、な人のはずです。こうした情報を様々なプラットフォームで発信すればよいのです。

旅行に行って、穴場を見つけたら、それを紹介する。失敗談も役立ちます。「ここのエリアにはトイレがないから気をつけろ」みたいな情報もよいでしょう。あるいは、語学学習に関することや、日本文化に関することでもよい。

ネットを通じて、こうした情報は広く伝わります。その中には、これから観光をしようとする人(観光客)、これからガイドをしようとする人(ガイド)、これから良いガイドを探そうとする人(旅行会社)、これからガイド試験を受けようとする人(受験者・学習者)、などが含まれます。

このように、受け手を観光客に限定せず広く考えておけば、発信する内容も広くなり、いろいろな人がいろいろな情報を発信できます。

そして、こうした情報を欲する人たちに、有用な情報を提供すれば、その人たちは、その発信者に感謝し、ファンになってくれます。

自分が苦労して得た情報を、そんなに何でもかんでも無料で出したら、ビジネスにならないのではないか、と思われる方もあるでしょう。

ところが、意外にそうでもないのですね。もちろん、ビジネスである以上、有料のアウトプットも大切ですが、無料で出すことによるメリットは、ネットが発達した現在、思っている以上に大きいのです。

コンテンツ作成者がネットを使って無料の発信をすることのビジネス上のメリットは、これまで述べてきたごとく、①ファン(潜在顧客)の獲得、②広告費の削減、③コンテンツの資産としての蓄積、④広告掲載などによる収益、などです。

こうしたメリットは、ネット発達以前から存在していましたが、ネットの発達により、これらのメリットは思ったよりもずっと大きくなっています。その最大の理由としては、ネットを使った情報配信は、デリバリーのコストが極めて小さいことが挙げられます。

ネットがない時代、動画や文章を潜在顧客に届けようとしたら、ビデオテープや冊子といったメディアにこれを載せ、そのメディアを郵送しなければなりませんでした。これにはものすごいお金がかかります。さらに、これらを送ったとしても、見てもらえる可能性は必ずしも高くありませんでした。

ところが、現在では一度コンテンツを作り、これをネット上にあげておけば、見たい人が見たいときにクリック1つで見ることができる状態を実現できます。

広告料による収益化についても、昔はテレビ局や番組制作所などでないかぎり、コマーシャルのスポンサーを得ることなどほぼ不可能でした。しかし今では、YouTubeへ動画をあげれば、適切なスポンサーが一瞬のうちに自動的に見つかります。

また、アマゾンキンドルの電子書籍出版のように、無料で読ませても著者にお金が入ってくるような仕組も作られています。

このように、積極的なネット情報発信はまさにWin-Winなのですね。物事は、やっているうちに腕も上がり、新しい方向性が見えてくる、ということもあります。とにかく、情報発信をやってみられることをお勧めします。
(つづく)