前回、「全国通訳案内士の資格を取っても条件のいい仕事などない。よって、この資格は取っても役に立たない資格だ」という誤解がなぜ起こるか、という話をしました。
この誤解は、①「通訳案内士は時給労働ではない」という認識がなされないこと、②約半世紀ほど前に、「通訳ガイドの資格を取りさえすれば、割のいい仕事がすぐにできる」という時代が一時的にあったため、その幻影を引きずっている、という2つのことが原因で起きるのでした。
フリーランスや自営業でものを言うのは「実力」だけです。学歴や資格は関係ありません。たしかに一部の士業は、資格が法的要件になっていますが、これは必要条件であって、十分条件ではないのです。
よって、「この資格さえ取れば、あとは食べていける」といった資格は存在しないのが本来の形です。50年前のガイド業界の状態が、異常な状態であったのです。
似た例として法曹の資格があります。昔は、司法試験に合格さえすれば、公務員として給料がもらえる司法修習所に2年間入ることができ、その後は大概、裁判官や検察官、ないし弁護士として就職ができる、という時代がありました。しかし、21世紀になってからは弁護士の就職難が続いているのはご存知の通りです。
要するに、通訳案内士も弁護士も、自営業の本来の形に戻っただけのこと。資格を取っただけでは食べていけないからといって、当該資格を取得する勉強に価値がない、と考えるのは間違いです。
自営業やフリーランスの仕事を始めて、最初からバッチリ黒字が出る、というのはまれなケースであり、最初はなかなか食えないのが当たり前です。最初から黒字が出ている場合は、それ以前に副業として始めていた等、助走期間があったことが多いと思います。
では、具体的にどのように「助走」、すなわち準備をして、自営業を起ち上げればいいか、ということについて、次回以降、考えていきたいと思います。