合格後を考える(4)

前回、全国通訳案内士試験に合格後、仕事を始める際に必要なことは「起業家マインド」を持つことである、という話をしました。この話を続けていきたいと思います。

そもそも、通訳案内士が独立自営業者である、というのは昭和の時代から、ずっと当たり前の事実として存在します。それなのに、なぜ一部の人は「せっかく手間ヒマ金をかけて資格を取っても、いい条件で雇ってもらえない。やっぱり通訳案内士は取っても役に立たない資格だ」と思ってしまう人がいるのでしょうか。

通訳案内士を含む独立自営業者は、雇われて(雇用契約で)時給労働をするのではありません。漫画家や執筆者、写真家等と同じで、顧客に満足な価値を提供できるか、が肝心であり、自分が仕事に費やした時間がどれだけ長かろうと、受け取る対価とは関係がありません。

通訳案内士が、タイムチャージのシステムを採っても、それは納める商品がモノではなくサービスである関係上、便宜的にこれを採用しているにすぎません。まず、この「そもそも、通訳ガイドとは『雇ってもらう』働き方ではないのだ」という事実がきちんと認識されていないことが、上記のようなミスコンセプトの原因の1つです。

もう1つの原因としては、今から50年ほど前、オリンピックや大阪万博などで通訳ガイドの需要が増えたにもかかわらず、資格保持者の数が少ない、という特殊な需給関係があった時代の幻影を今でも見ている人がいる、ということが挙げられます。確かにこの時代は、資格さえ取れば引く手あまた、割のいいバイトが学生でもできる、ということが実際にあったようです。言うまでもなく、現在は状況が全く異なります。

(つづく)