全国通訳案内士試験二次口述は、面接です。面接試験で試験委員は、受験者の実力のうち、筆記試験で測ることができない点を見ます。
筆記試験で測れない点とは、主として①音声面、そして、②非言語面、です。笑顔とアイコンタクトは、②に該当します。
適切な笑顔とアイコンタクトは、基本的に必要です。ただ、例外があります。
それは、通訳課題です。通訳課題においては、笑顔、アイコンタクトは不要です。最後の結びの言葉 Thank you for listening. も要りません。
理由は、この動画で解説していますが、要するに「通訳」という言語活動の本質から導かれます。
通訳という言語活動において、通訳者は「媒体」に過ぎず、表現しているのは他人の思想です。
通訳の対象となる話者が「クロ」と言っていたら、通訳者は、必ず「クロ」と言わなければなりません。もちろん、言語は変えますが、内容を変えてはならないのです。
つまり、一定の「正解」がある程度想定されている、その意味で、他の課題よりも筆記試験に近い性質があるのですね。内容が正しいことこそが大切であり、「媒体」がニコニコする必要はないわけです。
これに対し、プレゼンや質疑では、知識内容の正誤ではなく、そのデリバリーの「態度」が重要です。態度は筆記試験では見ることができず、まさに口述でのみ評価できる項目です。
二次口述の課題は、プレゼン⇒プレゼン質疑⇒通訳⇒実務質疑、の順番で出題されます。この中で、真ん中の「通訳」のみが、このように特殊な性質を持っています。
こうして、受験者が課題の性質を把握しておくことにより、課題ごとに頭のモードを切り替えて、適切に解答できるようになります。