実務質疑で問われること

過ごしやすい陽気となってきました。本年度の全国通訳案内士試験二次口述まで、あと52日です。

二次口述の課題の1つ「実務質疑」では、「ホスピタリティ」が問われます。これは「ガイドライン」に明文で示されています。

ホスピタリティとは、臨機応変かつお客様の気持ちに寄り沿った対応ができる、ということです。

一般的にこうした場合、受験者には、知識の正確さよりも「話し方」が重要です。

たとえば、「悪天候で屋外の観光が不可になった場合の代替案を示す」ことが必要な問題(例:2022年度時間帯5「雨の場合の桜島観光」)においては、

(当該問題の掲載は『2022過去問詳解(下)』)

その場で可能な個別具体的なアトラクションの知識があることよりも、あてずっぽうで「博物館なら通常、どこでもあるだろう」として、提案することも許されます。知識より大切なのは、その提案の言い方です。つまり、

May I suggest that we visit a museum, sir?

といったお客様に対する丁寧な表現ができる、ということです。このように、実務質疑では知識よりマナーが大切だといえます。

ただ、逆のことを言うようですが、実は、実務質疑にも一定の知識を前提としている出題がなされたことがあります。

その1が「相撲チケット紛失」(2019年度の時間帯1出題)です。

当該問題掲載の『2018-19 全国通訳案内士試験 二次口述過去問詳解ダイジェスト

この問題の場合、「相撲チケットは再発行不可」という知識がないと、方向違いの案内をしてしまうことになります。

相撲チケットは、たとえ購入を証明できても、再発行は不可です。これは、購入者が現物を所持した人と鉢合わせした場合、その人は「善意取得」した可能性があるので、どちらが真の権利者であるか、相撲協会には判断できないからです。よって、現物を持った人が優先されます。

※善意取得とは、遺失物とは知らずに譲り受けた第三者が権利を取得する、という法律上の概念

もう1つは「日本刀を土産に持ち帰りたい」(2020年度の時間帯5出題)です。

これも、日本刀の所持、運搬、輸出、等に関する法律上の知識がないと、案内が難しいといえます。

当該問題掲載の『2020-21 全国通訳案内士試験 二次口述過去問詳解ダイジェスト

この問題については、YouTubeで解説しています。