ChatGPTを使う①

皆さんは、今話題のChatGPT、すでに試されたでしょうか?私も使い始めました。

私は、『モデル・プレゼンテーション集』をはじめとする、全国通訳案内士試験二次口述対策用のテキストを執筆しています。この仕事にChatGPTを生かせないか、と思ったのがその動機です。

私の限られた能力で、モデル・プレゼンテーションを書くのは、実は非常に大変なのです。ちょっとでも楽をしたい、と思ったわけですね(笑)。

そこで、まずはズバリ、モデル・プレゼンテーションを書くように、ChatGPT君に指示をしてみました。通訳ガイドの視点で、200ワードで、等々の条件を付けます。指示文は英語で書く方が良いようです。

お題は昨年出題された「中山道」を選びました。数秒で生成されたのが以下の文章です。

(以下引用)

I would like to talk about the Nakasendo, which is a historic road in Japan that was used during the Edo period (1603-1868) as one of the five major routes connecting Edo (now Tokyo) and Kyoto. The Nakasendo, also known as the “Central Mountain Road,” stretches through the picturesque Japanese countryside, passing by quaint villages, tranquil forests, and charming post towns.

This ancient road was an important trade and travel route, and it was lined with various stations where travelers could rest, eat, and lodge. Today, the Nakasendo offers a unique opportunity to experience Japan’s rich history and culture, as it remains relatively untouched by modernization. Walking along the Nakasendo, you can witness the beauty of traditional Japanese architecture, including old wooden houses, historic bridges, and stone pathways.

One of the highlights of the Nakasendo is the opportunity to meet friendly locals, who are often eager to share stories about their town’s history and traditions. The Nakasendo also offers stunning natural landscapes, including serene forests, sparkling rivers, and awe-inspiring mountain vistas, making it a perfect destination for nature lovers and outdoor enthusiasts.

As a tour guide, I would recommend taking a leisurely stroll along the Nakasendo, immersing yourself in the beauty of the Japanese countryside, and learning about the history and culture of the region. It’s a unique and authentic experience that offers a glimpse into Japan’s rich past and its timeless beauty. Thank you.

(上記英文は、235ワードでした。和訳もしてくれます。以下)

「中山道」についてお話しします。中山道は、日本の歴史的な道路であり、江戸時代(1603年-1868年)に江戸(現在の東京)と京都を結ぶ五街道の一つとして使用されました。中山道は「中央山岳道路」とも呼ばれ、美しい日本の田園風景を抜け、古い村や静かな森、風光明媚な宿場町を通り抜けます。

この古い道路は、貿易や旅行の重要なルートであり、旅人が休憩し、食事をし、宿泊できる宿場が点在していました。今日、中山道は日本の豊かな歴史と文化を体験する絶好の機会を提供しており、現代化の影響を受けずに残っています。中山道を歩くことで、古い日本の建築の美しさを目にすることができます。古い木造の家屋や歴史的な橋、石畳の道などがあります。

中山道の魅力の一つは、地元の人々と交流する機会があることです。地元の人々は親切で、町の歴史や伝統について語りたがることが多いです。また、中山道には美しい自然の風景もあります。静かな森や清流、壮大な山々の眺めがあり、自然を愛する人やアウトドア派には最適なスポットです。

私としてのツアーガイドのお勧めは、ゆったりと中山道を散策し、日本の田舎の美しさに浸りながら、この地域の歴史や文化に触れることです。それは日本の豊かな過去と美しさを垣間見るユニークでオーセンティックな体験です。ありがとうございました。

(引用終わり)

これには最初ビックリしました。

上記の文章は、私が常に提唱しているプレゼンの定型「トピック告知⇒定義⇒一般的説明⇒具体的アトラクション⇒お勧め⇒結辞」をちゃんと守っています。これを本試験で言えれば合格です。

そうすると、私の仕事はもう要らない、ということでしょうか?(泣)

ここで立ち止まって考えてみます。まず、上記の文章を、私の名で発表する気になるか、と考えたとき、私はどうしても、その気にはなれないのですね。それは、法律的・倫理的にどうか、ということではなく、内容の問題なのです。

私が上記の文章を自分の文章である、と言いたくない理由は、文章に「魂」がこもっていない、と思われるからです。

資格試験対策を教える人が「魂」だなんて、感覚的、情念的過ぎる、と思われるかと思います。

でも、私は言葉というものは、そういうものだと思うのです。「言霊」という言葉がある通り、言葉にはその人の人格が宿ります。

人は、物事を言語化する際、その言葉にコミットします。つまり、自分の名で発表する言葉には「こだわり」が生じます。

生活の中で言葉を使う際、「意味さえ通じればそれでいい」「文法的に間違いがなければそれでいい」という場合は、考えてみると意外と限定的です。

ChatGPTをはじめとするAIの発達で、通訳やガイドの仕事は機械に奪われてしまうのではないか、という議論があります。

私は、語学・言語についてこれまで人間がやってきたことの一部が機械に取って代わられることはあるだろうが、その程度は思ったより限定的だと考えています。なぜなら、人間には感情があるからです。

たとえば、今やすでに「ポケトーク」などの結構高性能の通訳機が存在します。では、これがさらに性能を上げたとして、岸田首相とバイデン大統領が首脳会談を行う際、2人がポケトーク1台を持って密室に入ってサシで話す、ということがあり得るか、と考えてみるといいと思います。

私は、これはありえない、と断言します。どんなに機械翻訳が発達しようと、両リーダーは、それぞれ自分の信頼する腹心の通訳者を伴って会談に臨むはずです。

もし、通訳やガイドがロボットに完全に取って代わられる日が来るとしたら、それは「鉄腕アトム」や「ドラえもん」レベルの、人間と同様の人格を持つロボットが出来た時です。

というわけで、私の仕事、すなわち英語を教えたり、テキストを執筆したり、訳したり、等々は、まだ当分は続く、という結論になります。

ちなみに、「中山道」のプレゼンテーション例については、私は上記の文章とは全く異なるものを書きました。先日、実は中山道へ旅をして、書きたいこともあったからです。

私バージョンの「中山道」は、例年通り、夏ごろに出版予定の『全国通訳案内士試験二次口述 過去問詳解』や『モデル・プレゼンテーション集 過去問編』に載せますので、どうぞお楽しみに。