こんにちは。杉森です。
全国通訳案内士試験プレゼン演習シリーズの3回目、今日は「破」以降の演習方法のご紹介です。
守破離の「破」の段階とは、技術習得の最初の段階「守」で基本的なインプットが終わったことを受けて、適切なアレンジができる次の段階のことです。
言うまでもないことですが、プレゼンテーションを合格レベルにするには「テキストの丸暗記⇒そのまま吐き出し」(「守」)だけでは、到底対処できません。
だから、「破」を経て最終的に「離」(自分のオリジナル)へ至る必要があるわけですね。つまり、丸暗記(「守」)と完全即興(「離」)の橋渡しをするのが「破」の段階、ということになります。
さて、この「破」の演習方法は、「圧縮・解凍法」という方法です。
これは一言でいうと、モデルとなるプレゼンテーション(完全原稿)をメモ(箇条書き等)にまとめ(圧縮)、そのメモを見ながら元のプレゼンテーションを再現する(解凍)する、という方法です。
再現するプレゼンテーションは、話の筋が通っていてまとまっている限り、必ずしも元のプレゼンテーションと同一でなくて構いません。表現や内容を自分に向いているようにアレンジしてOKです。
下は演習用プリント教材「ドリル式 モデル・プレゼンテーションBest集」の圧縮メモのページです。このようなテンプレに書き込む形で、メモを作成するのがお勧めです。
この「圧縮⇒解凍」のプロセスを何度も繰り返します。そしてその度にメモの量を減らしていきます(圧縮度を高める)。
つまり、最初はたくさん書いておかないとプレゼンの再現ができないが、徐々に少ないメモから、スピーチができるように実力を高めていくのですね。
なお、「解凍」を行う際は、やはり専用の「プレゼン2分タイマー」を忘れずに掛けながら行います。
この「圧縮・解凍法」が有効である理由は、以下のようなものです。
(1)本番の試験では30秒の準備時間が与えられ、この間にメモを作成することが許される。つまり、「メモから話す」というやり方は、本番に極めて近い行為である。
(2)メモを準備してスピーチをする、というのは、原稿の棒読みを避け、自然な話し方でスピーチをするための方法論として、伝統的に認められたパブリックスピーキングのメソッドである。
上記の(2)について補足ですが、この「圧縮・解凍法」というメソッドは、私のオリジナルではありません(ネーミングは私のオリジナルですが)。
人前でまとまった話をするように頼まれた場合、パブリックスピーキングに慣れていない人は、どのような準備をすればいいか、悩みます。そのような場合、とりあえず原稿を書いて、それをそのまま読み上げる、ということにしておけば、少なくとも万座の前で絶句する、という事態だけは避けることができます。
この原稿読上げ方式は、内容を吟味でき、言い洩らしや重複を確実に避けることができる、というメリットもあります。しかし、どうしても機械的な棒読みになってしまい、聴衆の心に響きにくい、というデメリットがあります。
そこで、ある程度まとまった話を自然な態様で行う方法として、最初に作った原稿をメモ化し、それをもとにスピーチのリハーサルをして本番に臨む、という方法が編み出されたのです。
メモから話すと、多少は言いよどんだり、内容がぶれたりする可能性があります。しかし、それはかえって自然で聴きやすいスピーチであるとも言えます。また、部分的にアドリブを入れたりする、等の対応もやりやすくなります。
このやり方を繰り返していくと、言語能力、スピーチ能力自体が高まり、やがて元の完全原稿の準備が不要となり、最初からメモだけを頼りにスピーチができるようになります。
全国通訳案内士試験のプレゼンも、原稿読上げが許されないわけですから、状況はよく似ています。
ただし、同試験の場合は、外国語で行うものです。そこで少しハンディを貰って、最初から自分で原稿を書くのではなく、出来合いの教科書のモデルを利用する、というわけですね。
この「メモから自分の言葉で話す」ということができるようになれば、「破」の段階を卒業し、「離」の段階の準備ができます。ここからは、自分のオリジナルでプレゼンを作り、発表していく、ということになります。
日本の芸道習得における伝統的原則「守破離」を英語プレゼンに応用する、という方法論、いかがだったでしょうか。
まとめますと、
守:初心のうちは文句を言わずひたすらインプット(丸暗記)⇒タイマー音読、暗唱
破:原則がつかめたら自己流にアレンジ(インプット+アウトプット)⇒圧縮・解凍法
離:オリジナルを世に問う(アウトプット)⇒自分のプレゼンを書く、即興で話す
となります。
古臭い印象のある「守破離」も、実はインプットとアウトプットの繰り返しという、学習の原則に則っており、ちゃんと語学学習にも応用できることが分かります。
参考にしていただければ幸いです。
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