単語の覚え方(3)

本シリーズ前回(2)では、多義語と一義語のそれぞれについて説明いたしました。

本来、英語と日本語は別の言語である以上、語彙は一対一の関係にない方が原則、つまり多義的な語彙が原則、一義的な語彙は例外です。

そして、異文化や外国語を学ぶことの意義は、自分の文化や言語に存在しない発想を学ぶことにより、自分の文化や言語を客観的に捉えられるようになることです。ですから、外国語の上級者とは、「知っているようで実は知らない語」、つまり「多義的な語」を使いこなせる人のことであり、これが本来、我々の目指すべき語学の本質です。

ただ、こうして頑張って「上級者」になったとしても、「知ってる知らないで勝負が決まる」場面においては、「たまたま(特定の一義語を)知らなかった上級者」は「たまたま知ってた初心者」に完膚なきまでに負けてしまうのですね。

前回挙げた「私はザクロとビワが好きです」を英語で言いたい場面がそれです。この場合、「ザクロ」「ビワ」の英語(一義語)を知っているか否かだけで勝負は決まってしまいます。

このように結論的には、「多義的な語」も「一義的な語」も学習者にとって重要です。ただ、両者の性質が異なる以上、その学習法を個別に考えるのが良いといえます。

前述の通り、「多義語」の学習には多読を中心とした「考える」学習が必要です。一方、「一義語」の方は、単純な暗記です。そして、その数は意外に多い。よって、前者の学習には机に座った時間をあて、後者の学習には日常のスキマ時間をあてるのが合理的です。

スキマ時間を活用するためには、教材の形状が非常に大切です。持ち運びがしやすく、どこでも取り出して勉強できるよう、軽く、小さく、単純で使いやすいものである必要があります。

そして、形状をコンパクトにするためには、載せる情報量を絞り込み、単純化する必要がある。それゆえに私は、スキマ時間を利用するための単語力増強教材は、①日本語、②対応する英語、③発音、の3つしか載せず、かつエントリーは全て一義的な名詞に限定する、という極めて単純なコンセプトを採用して作ることにしたのです。

なお、③の発音を残したのは、語学学習において音声を重視する立場ゆえです。受験英語の弊害で、今でも「発音は後回し」という英語学習法を採る人が結構いるようです。私は、単語を覚えたいという学習者には、逆に「最初は意味を覚えなくていいから、まず発音を覚えて下さい」とアドバイスしています。

さて、このような考えに基づき、私は単語力増強教材として、『日本事象英単語帳』「クイック・レスポンス単語テスト(QRT)」、そして今回「PEP単語カード」を作りました。紙のカードをリングで綴じたものの良い点は、形状がコンパクトかつ、単純で使いやすいことです。

PEP単語カード製作用の用紙はこちらから購入できます。アマゾンが一番安いようです。

カードは分割・再結合が自由にできますから、覚えたい単語のカードだけを持ち歩き、覚えてしまったものは、新しいものと交換する、というやり方で効率よくスキマ時間を活用できます。まさに「一義語」の学習にピッタリなのですね。

(つづく)

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